
恵まれた世代の寵児たち
筋トレブーム、YouTubeブーム。
今は、誰でも筋トレの情報がすぐに手に入る。
俺にとっても、筋トレをするのに重要な情報源である。
いろいろな筋トレ動画を観るうちに、厄介な傾向があることに気が付く。
凄いだろ!俺の筋肉。君も努力すればこうなれるぜ!
YouTube動画で自分の裸を見せるくらいだから、当然自信があるのだろうし、観ている方としても、遠く未来のことだとしても目標になる。
これ自体何も悪くないし、逆にありがたい。
でも、ここからがちょっと問題。
自分と同じようにトレーニングすれば、誰でもこうなれると、明に暗に謳っている人がなんと多いことか!
まず、たくさん見られているような動画の主は、多くが20代~30代の若い世代の人であるということ。
この点、俺のように、50代から本格的に始めようとしている人にとっては、体躯の遠い目標としての鑑賞素材にはなっても、トレーニング目標としてはほとんど参考にならない。
例えば、インターバルは長く取り過ぎるな、とか、増量と減量をかなりのカロリー増減で年に何回もやれ、とか、完全に無理。
結局俺が見るのは、若い人にも通用し、中高年にも配慮した、真に筋トレプロの動画ということになる。
比較的高いエビデンスを提示し、体や食事のことをきちんと勉強して知識もあり、『俺様動画』とは趣が違う動画はとても役に立つ。
ただ、それらのある程度きちんとしたことを言っている人たち(確度の高いエビデンスを示し大学で教えることのできるレベルの人)でさえ、「絶対○○」とか「最高の○○」とか、誇張した表現には閉口することもある。
基本的に、筋トレに限らず、人によって条件が異なるのだから、「絶対」や「最高」はあり得ない。
ユーザーは極悪人だ、と言わんばかりの主張
ボディメイクをする人たちの間では、アナボリックステロイドを使って筋肥大する人のことを『ユーザー』と呼び、使っていない人のことを『ナチュラル』と呼ぶ。
『ナチュラル』を自称する特に若い筋肉YouTuber達の『ユーザー』批判は、聞くに堪えないほど凄まじい。
アナボリックステロイドは薬である
当ブログでは、アナボリックステロイドを使うことを悪とはしていない。
理由としてはいくつかある。
- アナボリックステロイドの一つであるテストステロンは更年期障害(LOH症候群)で使われるれっきとした治療薬であるという点。
- ドーピングが禁止されている競技に出ないのであれば、元々筋肉が少ない人にとっては、副作用を凌駕するとても有効な薬だという点。
- 中高年からでも若者のように短期間で筋肉を付けることのできる、唯一の薬剤群だという点。
本当に『ユーザー』は悪なのか?
一方、若い人気の筋肉YouTuber多くは、アナボリックステロイド=極悪という風に捉え、それを吹聴している。
ただ、主張をよく聞いてみても、科学的な否定ではなく、規則だからダメという、自分の頭で考えていない、エビデンス薄弱な根拠がほとんどである。
一番多く聞くのは、ドーピング検査のある大会で使用している人がいるのが、「ずるい」といった子供っぽい感情的な主張だ。
検査時にパスできれば(検査までにアナボリックステロイドが体から抜け切れば)、上手に使ってドーピング検査のある大会にも出ることもできてしまう。
しかし、複数のYouTuberが指摘するように、昔から現在に至るまでボディビル大会では、アナボリックステロイドが公然と使われてきているようだし、反対する若い筋肉YouTuber達も、そこで入賞した人たちを見て感動してボディメイクの世界に入り、その情熱や情報を使って自分の体を大きくしたのだという矛盾を、周りに対してどう説明し、自分に対してどう繕うのだろうか。
成功者は恵まれた環境があってこそ
筋力トレーニングという観点を考えた時、彼らアナボリックステロイドを否定する若い世代は、俺たち古い世代からするとかなり恵まれた世代だ。
なぜなら、俺たち世代が持っていなかったインターネットという神器によって、「筋トレしたい」という動機を若いうちに醸成することができ、その醸成された情熱と先人が積み重ねてきた多くの知見をもとに、テストステロンが最大の若いうちに適切なトレーニングを開始することができたのだから。
俺たち古い世代が、享受できなかったこの若い世代の環境を、アナボリックステロイドという魔法によって代替することを極悪として切り捨てることこそ、非情で無慈悲というべきだろう。
恵まれた環境が前提としてあって、その上での自分の努力なのだということを忘れないで、影響力ある若き人気筋肉YouTuberたちには自分の主張を繰り広げてほしいものだ。